多焦点眼内レンズ
多焦点眼内レンズとは
白内障手術の時に、混濁した水晶体を除去したあと目の中にいれる眼内レンズには、多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの二種類があります。
多焦点眼内レンズは、焦点を1つの距離のみにあわせる従来の単焦点眼内レンズと異なり、遠距離と近距離(中距離)の2つの焦点を持っています。
多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズとの違い
単焦点眼内レンズは1か所に焦点が合うので、下の写真のように遠くに焦点を合わせると近くはぼやけます。そのため手元のガイドブックを読むには老眼鏡が必要になります。一方、多焦点眼内レンズは遠くのみでなく手元も見やすくなるので、老眼鏡の必要性が大幅に減ります。
多焦点眼内レンズで知っておいてほしいこと
多焦点眼内レンズはメガネなしで見える範囲が広がるので、とても便利なのですが、単焦点眼内レンズに比べて見え方で気になる点があるので、ぜひ知っておいてください。
1.コントラスト感度の低下
映像のシャープさ、微妙な濃淡が、単焦点眼内レンズに比べると低下しますが、多くの場合日常生活に支障をきたすことはありません。
2.夜間のハロー・グレア
ハローは光のまわりに輪がかかったように、グレアは光が花火のように見える現象です。手術後、時間が経過するに伴い気にならなくなる方がほとんどですが、夜間の運転時に気になる方が時にいらっしゃいます。
3.眼鏡の必要性について
近くと遠くの両方にピントを合わせることができるため、通常の生活で眼鏡を装用する必要性は少なくなります。しかし、若い頃のようにどの距離でもくっきり見えるわけではなく、中間距離(50cm~1m)や、長時間読書をするときなどは眼鏡をかけた方が楽に感じる場合もあります。
多焦点眼内レンズの種類
下記の通り、大きく二種類に分類できます。
患者さんのライフスタイルなどから相談の上、その中から最も適したレンズを選択させていただきます。
1. 手元を重視した多焦点眼内レンズ
遠方に加え、30㎝もしくは40㎝ぐらいが見やすいレンズです。30cmは読書やお裁縫、40cmはスマホやパソコンの画面を見る距離になります。ただ、より近くを見やすくするデザインほど、中間距離が見えにくく、コントラスト感度の低下や夜間のハロー・グレアが出やすいです。これらのことはそれほど気にならず、老眼鏡なしで近くをよく見たい方に適しています。
使用するレンズの一例
2.中間を重視した多焦点眼内レンズ
(焦点深度延長タイプ、通称EDOFレンズ)
遠方から1mぐらいの中間距離が見やすいレンズです。読書など近くは、単焦点眼内レンズよりは見えますが、よく見たい場合は老眼鏡が必要になることがあります。多焦点眼内レンズで気になるコントラスト感度の低下や夜間のハロー・グレアが少ないのが利点です。遠くをよく見たい、必要なときには老眼鏡を使うので問題ない方に適しています。
使用するレンズの一例
3焦点眼内レンズ・パンオプティクス
国内初承認の新しい3焦点(トリフォーカル)眼内レンズ アルコン社「PanOptix(パンオプティクス)」を導入しました。従来の多焦点眼内レンズが遠・近の2焦点に合わせるものだったのに対し Alcon PanOptix® は3焦点の眼内レンズで、遠・中・近の3焦点に合わせることが出来るようになり、よりメガネに依存しない自然な見え方で、快適な生活を送れるようになることが期待されます。
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