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「緑内障治療のご紹介」 SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)・iStent inject®W・Hydrus®・プリザーフロ®マイクロシャント緑内障ドレナージシステム

当院では緑内障治療としてSLT選択的レーザー線維柱帯形成術、iStent inject®W、Hydrus®、プリザーフロ®マイクロシャント緑内障ドレナージシステムを行っております。

 

SLT:選択的レーザー線維柱帯形成術とは
緑内障は、眼圧が高くなることで視神経が少しずつ傷んでいく病気ですが、SLTは薬や手術の中間にあたる体への負担が少ないレーザー治療です。
SLTでは低エネルギー光の短パネルを眼の特定細胞内にあるメラニンに照射します。この処置によって体内の自然治癒反応が引き起こされ、これらの細胞の再建に向け働きます。この再建プロセスは房水の排出障害を改善し眼圧を低下させます。

緑内障治療手順図4

治療の流れ
1.まず目に麻酔の目薬をさします(痛みはほとんどありません)。
2.専用のコンタクトレンズを装着し、レーザーを数分間照射します。
3.治療後は少し休んでから帰宅できます。
通常、入院の必要はありません。

治療後の流れについて
•治療直後は少し充血したり、目が重く感じることがありますが、ほとんどの場合1〜2日で落ち着きます。
•効果は数週間〜数か月かけてゆっくり現れます。
•眼圧の下がり具合を確認するため、定期的な通院が必要です。
•1回のレーザー治療で2〜3年効果が持続します。
•2〜3回繰り返し治療が可能なため、しばらくの間は点眼なしで管理できる可能性があります。

メリットとデメリット
・メリット
•痛みがほとんどなく、短時間で終わる
•お薬の数を減らせる場合がある
•繰り返し行える
・デメリット
•効果の出方には個人差がある
•まれに一時的に眼圧が上がることがある
•定期的な経過観察が必要

こんな方におすすめです
•点眼治療での効果が十分でない方
•薬の副作用や点眼の手間を減らしたい方
•手術までは希望しないが、眼圧を下げたい方

 

iStent inject® Wとは
iStent inject® Wは、アメリカのグラウコス社(Glaukos Corporation)が開発した、低侵襲緑内障手術(MIGS)用の眼内ステントです。
長さ360μmの医療用チタンの緑内障手術用インプラントで、人体に挿入する既存の医療機器の中では最小です。目の中を流れる「房水(ぼうすい)」の排出を助けることで、眼圧を下げ、視神経の負担を軽くする目的で使用されます。「薬の負担を減らしたい」「できるだけ体にやさしい方法で眼圧を下げたい」という方に適した治療です。図5 仕組み
緑内障では、房水の出口にあたる「線維柱帯(せんいちゅうたい)」という部分が詰まりやすくなり、その結果、眼圧が高くなります。
iStent inject® Wを眼の中の組織に留置することで、眼圧を調整する房水の排出を改善し、眼圧を下げます。

手術方法
この手術は白内障手術と同時に行います。白内障手術では小さな切り口を作りますが、その同じ切り口から器具を挿入してiStent inject® Wを眼の組織に留置します。手術中に頭の位置を変えたりすることがありますので医師の指示に従ってください。
手術時間は10〜15分程度で、体への負担が非常に少ないのが特徴です。図6 特徴とメリット
•低侵襲(体への負担が少ない):従来の緑内障手術より切開が小さく回復も早いです。
•白内障手術と同時に可能
•自然な流れを利用:房水の本来の経路を活かして眼圧を下げる仕組みです。
•繰り返し治療も可能:必要に応じて追加のMIGSデバイスを挿入することもあります。

安全性と実績
米国や欧州では標準的な緑内障治療の一つとして広く行われており、日本でも保険診療の対象になっています。

 

Hydrus®緑内障マイクロステント
Hydrus®緑内障マイクロステントは、Alcon社が取り扱う、緑内障に対する「低侵襲緑内障手術(MIGS:Minimally Invasive Glaucoma Surgery)」用の医療用ステント(小さな器具)です。
成人の「開放隅角緑内障(primary open-angle glaucoma)」で軽〜中等度の眼圧上昇がある方に、眼圧を下げるために用いられます。 Hydrus®緑内障マイクロステントは、「従来の大きな手術に比べて侵襲が少なく」「白内障手術と同時に実施可能な」「比較的負担の少ない緑内障手術」です。薬でのコントロールが難しい場合や、点眼の負担軽減を希望される方には、選択肢の一つとしてご検討いただけます。図6図7 仕組み
•ステント本体は長さ約8 mmで、眼の中のシュレム管という房水(目の中の水分)が排出される自然な通り道の中へ挿入されます。
•Hydrus®緑内障マイクロステントは、シュレム管を優しく拡張させることで眼球内の房水の流出路の流れを促進させます。
•臨床データも充実しており、例えば5年間フォローアップされた研究では「薬を使わずにいられた割合」や「追加手術が必要となった割合」が従来手術群より有利という報告があります。図8 手術方法
•多くの場合、白内障手術と同時に挿入されることが多く、この同時手術において保険適用されます。
•眼に麻酔をした後、ナイフを用いてHydrus®緑内障マイクロステントを挿入する切開を作成します。作成した切開からステントを眼内(シュレム管)へ挿入します。
•対象は「軽〜中等度の開放隅角緑内障」であり、 手術後はステントが入った状態で房水の流れが改善され、眼圧低下や点眼薬の負担軽減が期待されます。ただし「すべての点眼を無くす」「失った視野を回復させる」わけではありません。

メリット
•体への負担が比較的少なく、短時間で手術ができる(白内障手術と同時術式で行われることが多い)
•自然な排水路(シュレム管)を活用し、眼圧のコントロールと点眼薬の軽減が期待できる
•臨床データも豊富で、安全性・有効性が一定レベルで確認されている

注意点/デメリット
•効果には個人差があり、必ずしも点眼薬を完全に無くせるわけではありません
•適用には限りがあり、すべての緑内障タイプに使えるわけではありません(例:閉塞隅角緑内障や重度緑内障など)
•ステントの位置ずれ、房水の流れ改善が十分でない場合など、追加治療が必要となる可能性があります。
•長期の効果については継続的なフォローが必要です

 

プリザーフロ®マイクロシャント緑内障ドレナージシステムとは図1 プリザーフロ®マイクロシャント緑内障ドレナージシステムは、緑内障(特に開放隅角緑内障)で「点眼薬では眼圧(目の中の水圧)が十分に下がらない」場合に用いられる、目の中の水(房水)の流れを助ける小さな管(シャント)です。
眼圧下降とそのコントロールを低侵襲な手術で可能にします。

どうして使うの?
緑内障では、房水の出口(線維柱帯やその先の通り道)が詰まったり、流れが悪くなることで眼圧が上がり、視神経がダメージを受けやすくなります。プリザーフロ®マイクロシャントは、その出口の先にバイパス(抜け道)となる管を設置して、房水を別の通り道から外に逃がすことで、眼圧を下げる手助けをします。図2 手術の流れ(簡単に)図3 メリット・特徴
•点眼だけではコントロールしづらい眼圧を下げる選択肢となります。
•従来の大きな手術(例:トラベクレクトミー)と比べて、体の負担が比較的少ないことが報告されています。
•実臨床でも、術後に点眼薬の数が減る、または使用を中断できるケースがあるというデータあり。

注意しておきたいこと
•効果には個人差があります。すべての方が点眼を完全になくせるわけではありません。
•手術にはリスクがあります。例として、術後に眼圧が低すぎる(低眼圧)状態になったり、シャントが詰まったりすることが報告されています。
•定期的な診察・観察が必須です。手術後も「緑内障の進行予防=視野を守る」ためのケアが続きます。

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