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緑内障における神経保護・2023年日本緑内障学会からの話題

現在の緑内障治療は眼圧下降により、視力・視野障害の進行を抑制することが目的ですが、眼圧下降によっても進行が止められない患者さんがいます。
近年、眼圧下降以外の治療として、神経保護薬が注目されています。2023年の日本緑内障学会でスタンフォード大学のJeffrey Goldberg教授より「Moving Neuroprotection from Lab to Clinic」というタイトルで招待公演がありました。
招待講演でお話がありました神経保護薬の研究について、ご紹介致します。
その内容を以下に紹介したいと思います。
1)ヒト組替神経成長因子

(Recombinant Human Nerve Growth Factor:rhNGF)

 rhNGFは神経保護作用を有する薬剤で、点眼液は米国FDAにおいて神経麻痺性角膜炎の治療薬として認可されています。緑内障に対する応用も期待され、安全性・有効性を調べる臨床試験(Phase 1b)が始まっています。

2)毛様神経栄養因子(Ciliary Neurotrophic Factor:CNTF)

 毛様神経栄養因子(Ciliary Neurotrophic Factor:CNTF)は、毛様体ニューロンの生存因子として発見された強力な神経栄養因子で、神経保護作用、神経再生作用を有することが知られています。CNTFを徐放する硝子体内埋込インプラントNT-501を用いた臨床試験(Phase II)が行われています。

3)ANV007(抗C1qモノクロナール抗体)硝子体注射

 補体C1qは、緑内障を含む神経変性疾患のシナプス消失、神経損失に関与しています。急性緑内障において、抗C1qモノクロナール抗体フラグメントであるANX007の硝子体注射による視神経保護効果が報告されています。

4)ニコンチンアミド

 ニコンチンアミド(NAM)は、ニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)の前駆物質で、緑内障において神経保護作用を有することが分かってきています。英国、スウェーデン、オーストラリア、米国において、緑内障患者さんにNAM補充を行う臨床試験(Phase III)が始まっています。

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